痔闘病記 神戸・大阪編

1-17: コンクリートジャングルの悲哀

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◎前回までのあらすじ
ドラえもん型ドーナッツクッションを相棒とし、オフィスに戻ってきた俺だが、コンクリートジャングルの悲哀を思い知ることになる。
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2008年6月23日、ついにオフィスに戻ってきた俺。
俺の不在中に溜まってしまった仕事を俺は一心不乱に進めていく。 
プロジェクトリーダーとして、頭を悩ませる課題は多い。 テレビCMの細かい修正、競合他社の動向分析、店頭販促物の生産調整、お尻が痛い。
ん?お尻が痛い?

そう、俺は手術後のものと違う、新たな種類の痛みに気づいていた。
クッション界のモルヒネの誘惑に負け、躊躇することなくドラえもんの上に座っていたのだが、俺の肛門に装着された、ゴム管の両端が俺の臀部に鋭く突き刺さりはじめていたのだ。

まだ、勤務を始めて数時間。
ランチにもなっていない。
しかし、痛みですでに俺の集中力は削がれ始めていた。仕事は山のように溜まっている。しかし、肛門の切除の痕と、ゴム管の刺さる痛みが俺を絶え間なく襲う。
どうすればいいんだ。。。
(どう痛いかは下記図、参照)
sasaru

「なんでもいいから、 まずやってみる。 それだけなんだよ。」
俺の愛読書、岡本太郎の自伝の一説が俺の頭を通り抜けた。 よし、俺もやってみよう。

俺はすくっと立ち上がり、オフィスの倉庫からダンボールを取り出してくる。
ダンボールを箱状に手早く組み立てると、ガムテープで補強し、机の上に載せる。
ノートパソコンを、手際よくそのダンボールの箱の上に載せる。

俺はおもむろに、ノートパソコンの前に立つと、手をキーボードに添えてみた。
「完璧だ。」
臀部に負担をかけずに仕事をこなせるイノベーションを完成させた瞬間だった。

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(その時の写真を、同僚の大田さんが撮っていてくれた。 まさに、この後姿、仕事を前に奮闘する阿修羅のようである)
(後日談: 数日後、俺が立って仕事をしていることを聞きつけた 営業ディレクターの相田さん(仮名)が、その部下を数人引き連れ、「おぉ、大変なことになっとんなぁ。お尻、痛いんかぁ、大変やなぁ」と大きな声でお見舞いに来てくださった。これによって、オフィスの人の中で、俺が痔であるという自信が確信に変わったという。)
(後日談2:さらに数日後には、その見事なキーボードさばきと、肛門の痛みから左右にゆらゆら動く姿から、DJマーケッターというニックネームが俺に付いていた。 さすが日本のあな痔シーンを引っ張る俺である)。
(後日談3:数時間後、俺の脚部の疲労感は限界だった。痛みを避けるために立つ。立つと足がむくみ疲れが限界を超える。座ると痛い。 そんなイノベーションの痔レンマへの解は、休足時間、だった。世の中の女子はすごいアイテムを使っているものである)

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オフィスに戻った俺は、痛みに打ち震えてはいたが、同時に二週間前の俺とは桁違いの自信を纏っていた。

そう、ウィスパーが、「超朝までガード (特に心配な夜用)」と、「パンティーライナー」に二刀流に進化していたのである。

ウィスパーを頻繁に取り替えられない睡眠中や、比較的動きの多い日は、超朝までガードに限る。
i) 後部を覆うように広がった形状は、ダムのように、俺の血液とナーバスな気持ちを受け止めてくれる。
ii) その底部に位置する吸収体は、ゆっくりと、しかしながら確実に流れる俺の血液をさっと吸収、そしてさらっさらな肌触りに転換だ。
iii) 唯一のコンサーンは、底部に位置する「体のすきまに合わせた アーモンド形吸収体」。大変恐縮なのだが、男性である、俺の体には、すきまがない。
歩くたびに、下から押し上げる微妙な違和感。
男性諸君、その微妙さは、男性がウォシュレットで興味本位に、ビデを使ってみた、あの時の感触に近い。
留意してほしい。

そして、俺はパンティーライナーにも真剣だった。
すでに、パンティーライナーがぴったり装着できるように、タイトなボクサーズパンツへ見事な移行を遂げていた俺だったが、場合によってパンティーライナー一枚では受け止められないリスクがあることに気づく。そもそも、一個あたりの吸収力がそれほど多くない上、形状が大きいわけでないので狙った場所をはずす可能性があるのだ。
頭を抱える俺に、インサイトフルなCMがリーチした。 女優が、心配な日の時に、生理用品の重ね使いに腐心するシーンだった。

次の日から、オフィスの22階のトイレに籠もっては、重ね使いに挑戦する日々。
試行錯誤すること、数日、俺は三つの形状を使いこなすようになっていた。
i) 一枚使い。基本形。 出血がひどくない時には、これで数時間おきに取り替えればOKだ。なによりもフィット感があり快適だ。
ii) 二枚並行型。 出血が多く感じるとき用。 痔の出血は場所が限られるので、縦列型よりも並行型がお勧めだ。
iii) トライアングル型。 比較的多めな日中、でも夜用を使うほどでもない時用。 i)の快適さと、ii)の安定感を、同時に実現するモデル。 その形状と万能性から、パンティーライナー界のトムキャット(F14:ベトナム戦争より投入された艦上戦闘機)とも呼ばれている。
tomcat

こんな試行錯誤を続ける俺を癒してくれるのは、生理用品の入った個包ケースのデザイン。
ちょっと憂鬱な気分で個室に入り、俺ポーチからウィスパーを取り出す。
その包み紙に目を落とすと、そこにはピンク色の花柄が咲き乱れている。
「 (=´∀`)人(´∀`=)」
憂鬱な気分だからこそ、こんなさりげない演出が心憎い。

しかし、排泄作業はいまだ困難を極めていた。
せっかく塞がり始めた傷口を、あっさりと蹂躙していく俺の排泄物。
永遠に傷が治らないような錯覚に陥る。
そして、トイレットペーパーで拭いても、拭いても、流れ出る血は止まる気配を見せない。

「拭けど拭けど、我が血とまらざり。 じっと手を見る」
(歌意:どんなに拭いても拭いても、依然として私のお尻から血が止まらない。 私はじっと手を見る。(掛詞))
俺はデスクに戻ると、一句詠み、苦々しくロキソニンを噛みしめた。
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そうこうするうちに、シートン法ならである、隔週のゴムを締める治療が近づいていた。 俺は週をまたいだ木曜日、大阪北逓信病院を再度訪れることになる。

(来週に続く)
<今週のQ&A>
今週もありがとうとうございます。
先週はブロガーであるからこその出会いが多い一週間でした。 ブログを毎週読んでくださる方とお会いできるなんて、まさに痔ロガー冥利につきます。 当初はこのブログは、シンガポール勤務の方々の中でひろがったのですが、その後金融、商社、医療系などを経て、今は航空会社にもリーチしたようです。 ふと考えると、ANAや、ピーチ、そして痔ALなど、何かと縁がある名前が航空会社には多いようです。今後も、場所を越えて、業種を越えて、さまざまな方に読んでいただけるといいですね。

今週の質問(今週の内容にリンクしますが、すでに何回か質問をうけていました)
「男性トイレに、生理用品を捨てるボックスないですが、どうしてたんですか?」
結論から言うと、洗面所の横にある、手を拭く紙を捨てる場所まで持っていって捨てていました。
始めのほうは、他の人に生理用品を持って、トイレをうろうろする姿を見られたくなく、トイレに流すことも考えたのですが、
トレイが詰まる→業者が直しに来る→ウィスパー発見→俺だとばれる
になる可能性が高い、というか同義的に流してはだめだろうと断念。
せっせと、毎回、トイレ入り口付近の紙を捨てる場所まで運んでいました。
トイレの清掃のおばさん、すいませんでした。
ポイントは3点
●まずは誰もいない時間帯は、朝早く、12時45分頃です。 的確に見計らっていきましょう。
●どうしても恥ずかしいときには、人が少ないトイレを探しましょう。 神戸オフィスの皆さん、15階、16階は穴場ですよ。
●余談ですが、私は常にトイレにポーチを持参していたのですが、中身はウィスパー(夜用&パンティーライナー)、ロキソニン(痛み止め)、コーラック、休足時間、脱脂綿、サージカルテープでした。 痔主の七つ道具ですね。 

では、今週もよい一週間を。

8 Comments

  1. あんなにナプキン談義で盛り上がれた男子は神が始めてです。
    そして女性すら知らない重ね付け応用編まで…
    パンティーライナーの可能性は無限ということを知りました!
    啄木になるほどの苦悩、完全ネタで根掘り葉掘り聞いてすんませんでしたっ(笑)

  2. 以前もコメントさせていただきました看護師のミユです。
    コメントへのお返事ありがとうございました、毎週愛読いたしておりましたが昨日気づきました。
    4月から保険点数が改定となり(2年に一度変わる)お調べしたところ肛門科のオペは10000点以下のものばかりですね。。局麻で済むものが多く管理がしやすいからでしょうか。。ちなみに肛門括約筋形成術は3990点。1点が10円なので3割負担の方だと12000円弱でできるのですね。残りは国が支払ってくれますから。病院の取り分としてはだれが支払おうと入ってくれば問題ないのですが、国民皆保険制度で何でも保険診療にすると、患者負担額は少なくて済むけれど、国の財政を圧迫してしまうからでしょうか。医療行為なんてお金にならないものばかりですけどね。。おだい痔にしてください。。

  3. E子さん、
    メッセージありがとうございます。 名前ばれてますよ 笑
    > あんなにナプキン談義で盛り上がれた男子は神が始めてです。
    > そして女性すら知らない重ね付け応用編まで…
    > パンティーライナーの可能性は無限ということを知りました!
    そうです。目の前のものだけに囚われてはいけません。心の中に眠る可能性は無限大です。
    ちなみに、すべってこけたときの大きい擦り傷にも、パンティーライナーは最強でした。
    > 啄木になるほどの苦悩、完全ネタで根掘り葉掘り聞いてすんませんでしたっ(笑)
    またシンガポール 痔ブログ会やりましょう。

  4. もぐらさん
    あの、かの有名なもぐらさんですか?メッセージありがとうございます。
    > 痔AL wwwww
    > クッソワロタwwww
    痔AL。もう出禁ですね。 痔ルクエアとか、コン痔ネンタル航空とかも考えたんですが、やっぱりナショナルフラッグですね。 それにしても、クッソワロタって 笑

  5. ミユさん、
    メッセージありがとうございます。
    > 4月から保険点数が改定となり(2年に一度変わる)お調べしたところ肛門科のオペは10000点以下のものばかりですね。。局麻で済むものが多く管理がしやすいからでしょうか。。ちなみに肛門括約筋形成術は3990点。1点が10円なので3割負担の方だと12000円弱でできるのですね。
    そうなんですね。ただ、こここそがポイントで、比較的簡単な痔の手術だといいのですが、痔ろうだったり、肛門括約筋に負担のかからない手術、糸が溶ける手術は保険に含まれないようなのです。結果として、痔ろうの人は自由診療の方が多いようです。
    医療費が増大するのは理解できるのですが、
    ●痔(ろう)のような手術でしか治らない、かつリスクを下げるためにはちょっといい手術をしないといけないものにも保険が適用され(他の難病とかも)
    ●同時に、多くの人は健康な日々を担保するために予防的なものにも保険が適用できる→結果として重病の数が減り医療費が軽減できる
    というほうがいいのでは、と私は痔の経験をふまえて感じています。
    またコメント欄でも、メールでもご教授ください。

  6. horimariさん
    メッセージありがとうございます。あの、私の同僚の方ですよね?
    > そんなに血がでるんだね・・・
    そうなんです。同時に、あまりの痛さに、心にも血の涙を流すほどなんです。
    でも、強いハートと、ウィスパーがあれば大丈夫なんです。

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