痔闘病記 神戸・大阪編

1-19: ピンクの小悪魔

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◎前回までのあらすじ
結び付けられたゴム管を、固く縛り上げられた俺の肛門。 いつ果てるとも知らない、痔ろうの旅が始まっていた。
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シートン法と共に迎えた夏は長く感じられた。
大阪北逓信病院に通う頻度は二週間に一回。
病院にいくたびにきつく締められる俺の肛門は、ゴム管によってゆっくりと切除されていき、そして二週間がたつとだいぶ緩まる。 そして、二週間後の木曜日にはまた締められるのだ。

ゆっくりとした切除法のため、他の手術法に比べると後遺症のリスクは低い。
しかし、3-6ヶ月かかる治療法のため、さながらゴム管と俺の肛門の、根気比べのような様相を呈していた。
「生きるために肛門を切っているのだろうか、肛門を切るために生きているのだろうか。」
痔問痔答する日々が続く。

しかし、ビジネスは死なない戦争だ。ブランドマネージメントのハブの存在である俺が止まるわけにいかない。
「The first-quarter profit did not meet its target, due to my anal problem.」
こんな事、アナルが裂けても言える訳ない。プロフェッショナルは、自分で責任を取るものだ。

俺はパフォーマンスを保つため、文明の利器に頼ることにした。

まずは、定番の生理用品だ。
今までのブログを見てもらってもわかるとおり、俺はどうせ生理用品を使うなら、将来のガールズトークに備えて、とことん使ってやろうと決めていた。
ウィスパー、ロリエ、ソフィー、Megami、、、
やはり最終的に生理用品を決めるのは、コットンのような肌触り、吸収力からくる安心感、肛門へフィットする形状。俗に言う生理用ナプキンの3C(コットン、吸収力、肛門)だ。
ちなみに、ナプキンをつけた日に、白いパンツスタイルで外を歩くことがどれだけ勇気がいることか。想像できない男性諸君には、猛省を願いたい。(俺はベージュのパンツでもドキドキだ。)
そして、2008年、天満駅前のダイコク、コクミン、オーエスで生理用品を買い漁っていたのはこの俺だ。いつも黒いビニール袋に入れてくれた店員の皆さん、ありがとう。

睡眠も、痔の患者にとっては頭の悩ませどころ。
睡眠時の姿勢で、仰向けなんてもっての他。肛門へのリスクが高すぎる。
ミティゲージョンプランとしてお勧めなのが、「うつぶせ」。 こいつは、息苦しささえ我慢すれば、肛門への負担は軽くなる。軽くお尻を突き出すと最良だ。わからない人は下記を参考に。
akebono

しかし、ゴム管で縛られている俺の肛門は、24時間火の玉ボーイ。 
こんなときは、二つ目の文明の利器、ロキソニンだ。 医療関係者だけでなく、一般の人にも広く知られる鎮痛剤。 こいつは病院で普通に処方される。
このロキソニンの真骨頂は睡眠時。  どんな姿勢をとっても続いていた痛みが遠のき、俺に安眠のときが訪れる。
唯一のリスクは、キムチ。 当時、俺は天満をルームシェアしていたのだが、シェアメイトが友人を呼んでキムチ鍋を作っていた。ロキソニンに満幅の信頼をおいていた俺は普通どおり食べたのだが、その夜俺の肛門は、全盛期のヴァンダレイ=シウバのように大暴れし、ロキソニンも焼け石に水だった。まさに痔業痔得。「キムチは寝て待て」とはこのことだ。 痔の手術直後の人は万全の注意を払って欲しい。(完治すれば問題ない)

最後に紹介するは、コーラックだ。
私の世代の人はぎりぎり覚えているであろう、あのピンクの小粒 コーラックだ。
肛門にメスを入れている患者にとって、固い排泄物は鋭利なナイフと同様だ。病院もそれを理解していて、入院初日から軟便剤が投与される。
しかし、退院してから軟便剤の在庫が尽きたときには、コーラック。こいつを朝に一粒飲むと、驚くほど排泄作業が楽になる。
ウォッチアウトはその分量。説明書に書いてある上限である3錠を摂取すると、かなりスプラッターな状況に陥る。梅田、芦屋、住吉の各トイレを使う羽目に俺はなった。これでは、何個肛門があっても足りない。 説明書には「症状に応じて3つまで」と書いてあるので、三つ必要な女子もいるのだろう。そんなあなたを、心から応援している。
(後日談: 俺のルームメイトは、当時職場でダイエット大会をしていた。どうしても勝ちたかった彼は、説明書も読まず「コーラックもらっていくよ」という威勢のいい言葉と共に、三つ口に放り込み出社していった。 1時間後の午前九時、「あかん、トイレから出られへん。あいつは、ほんまやばいで。ピンクの小悪魔や。」という瀕死のメールが俺に届いていた。ジェイソン並に目も当てられない残虐な陰惨な現場だったと聞く。 でも、彼は、一応、ダイエット大会は優勝したらしい。完全にドーピングだ。)

どんな道具、薬だろうと勝利のためなら使ってやる。 目的のためには手段は選ばず。
冷徹なマキャベリストの俺と、痔ろうとの戦いは最終フェーズへ向かっていた。

(来週に続く)
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◎今週のQ&A
今週もブログを訪問いただきありがとうございます。 ゴールデンウィークも終わった今週、皆さんの痔メモリーもよみがえっていること、そして晴れ晴れしい月曜を迎えていることを祈っています。

メール、コメント、会話、シンガポールでの痔ディナー、で聞かれる質問に毎週答えていたため、特に今はたまっている質問はない状態です。なので、代わりに、今後の展開を簡単に案内します。

以前お知らせしたものから若干修正しているのですが、
●次週  第20話 神戸・大阪 激闘編 最終話。
●翌週以降  第21-25話 シンガポール 痛恨の再発編
を予定しています。
疑惑のタイ編、 婚活男子 東京編、などのリクエストいただいているストーリーのタイミング含め、一度編集担当の方々(会社の同僚 笑)と話し合います。

というわけで、来週の激闘編 最終話をお楽しみに。
今週も、すばらしい一週間を。

4 Comments

  1. 第一部、いよいよ来週最終話なのですね。なんだか寂しくなってしまいます。
    婚活男子編、読みたいです!悩める痔男子の為にも、どうぞよろしくお願いいたします!

  2. おおさん、
    メッセージありがとうございます。
    > 第一部、いよいよ来週最終話なのですね。なんだか寂しくなってしまいます。
    第一部の後、そのまま、「シンガポール 痛恨の再発編」が5話続く予定です。感動巨編なので、ちょっと待ってくださいね。
    > 婚活男子編、読みたいです!悩める痔男子の為にも、どうぞよろしくお願いいたします!
    婚活、結果が全く出ていないので、痔男子の希望に全くならないかと。最初の条件が「痔に理解があること」なので、ハードル高めです。というか、確認する術がないんです!!

  3. 作者様、いつも楽しく読ませてもらっています。
    突然ですが、先日私の肛門にも痛烈な痛みが襲ってきました。作者様の痔伝にもあるように、始まりはいつも突然なものですね。ちなみに、このブログが、私に「痔と正面から向き合う勇気」を持たせてくれたおかげで、手遅れになることなく3週間ほどの薬物治療で治りそうです。
    私の痔は外痔核でした。診ていただいた神戸の名医、青山先生からは、「子供がよく転んで膝を擦りむくでしょ。外痔核は、大人が同じように擦りむいちゃっただけ、肛門を。治すのは簡単さ。肛門を優しく扱ってあげるだけでいいんだ。」と素敵なフレーズを頂戴しました。作者様といい、青山先生といい、痔に携わっている方のものいいや文章には、痔という難病に立ち向かって行く人間の強さや優しさがあふれている気がしますね。

  4. 私も外資系さん
    メッセージありがとうございます。
    薬物療法でいけたとのこと、本当にすばらしかったですね。外痔核は重くなると手術しないとならないと聞いていたので、本当に早めの処置でよかったですね。子供の傷と並べて、過度の心配を煽らず優しく処置する先生、すばらしいですね。
    私も外資系だからかもしれませんが、リスクを提示した上である程度科学的に治療法は選び、ただコミュニケーションにはあたたかさを感じる、青山先生(私は直接存じ上げませんが)、すばらしいですね。私も帰国したら寄ってみるかもしれません。
    > 私の痔は外痔核でした。診ていただいた神戸の名医、青山先生からは、「子供がよく転んで膝を擦りむくでしょ。外痔核は、大人が同じように擦りむいちゃっただけ、肛門を。治すのは簡単さ。肛門を優しく扱ってあげるだけでいいんだ。」と素敵なフレーズを頂戴しました。

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