痔闘病記 神戸・大阪編

1-7 撮影、切除、そして絶望

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前回までのあらすじ
肛門への違和感を一週間耐え、ついに叩いた名医 黒川肛門診療所の扉。分娩台にまたがりつつ、羞恥に耐え、診察を終えたかに思えたが。。。
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「典型的なアナジだな」
この言葉のマグニチュードを俺は理解していなかった。

分娩台にまたがったまま、診察終了、帰宅を今か今かと待つ俺。
しかし、先生は、俺に一瞥をくれると、奥の部屋に入っていってしまったのだ。
「早く帰りてえなぁ。」ぼやく、俺。

次の瞬間、奥の部屋の扉が開き、信じられない光景が広がっていた。
先生が、研修医を、たくさん連れてきたんだ。

「はい、今日の患者さん。痔ろうだから、ちゃんと見ておいてね」
この一言が号砲となり、研修医たちがぐいっ、っと顔を近づける。
彼らの熱視線が、俺の秘孔に突き刺さる。
その時、俺と彼らとの距離は100センチ。

この時、俺の心の堤防は、完全に崩壊した。
たぶん極めて日本人として典型的なサイズ感を誇る下半身をお天道様に向けて全開、本来その下半身を隠すためのタオルは、長時間の傾斜に耐えられず乳首あたりまで下がってる。
そんな俺を、きっと子供の時から神童と言われて、開成とか灘とか行っちゃったりしてたであろうエリート医者たちが一心不乱に覗き込んで、「いやぁ今回はわかりやすいですね」とか評論しちゃってる土曜日の朝。

「もう、好きにしちゃってください」

もはや、何があっても一層「No」と言わない日本人となった俺に、研修医たちが更なる提案を切り出した。
研修医「あの、すいませんが、今後の研究のために、写真とらせていただいてもいいですか?」

は?カメラ? もはや、自尊心を破壊され、急性廃人となっていた俺は朦朧としながら「はい」と答える。

しかし、このカメラがハンパなかったんだ。
「サイバーショット♪」とか「写メいきます」とかそんな感じだとおもったら、
出てきたのが、
超弩級。
プリントごっこ級のカメラ。(↓こんな感じ)
images

どこらへんが、プリントごっこ級かというと、①大きさ、②強力なフラッシュ機能、③みんなで囲んでバチコン、っと光らせるあたりだ。

にじりよる研修医。
プリントごっこみたいな巨大なカメラが、お尻に密着され、固定される。ちょっとひんやり。その刹那、バチコン、と強力な音と光を発する、フラッシュ。
俺の直腸から肛門にかけての詳細な画像が、文字どおりお尻の皺の数まで、後世のために残されたのだ。

<数分後>

4,5枚にわたる俺の肛門写真を確認した後、先生が治療に入ることを宣言。
第4話「出すか、出さざるべきか」で図解したが、俺の肛門にはマスカット大の腫瘍があり、このマスカットを切除するらしい。
切除のために、麻酔を打ち込む先生。しかし、なんだか時間がかかってる。トラブルか?
先生が俺にうちあけた。「ごめんね、膿がたまって麻酔効かないから、そのままいきますね。」
この一週間、ぐいっと押したことが、完全に裏目にでて、俺のマスカットが成長しすぎてしまったのだ。

肛門先に立たず、とはよく言ったものだ。

先生「はい、いきますね。がまんしてくださいね。」
俺「え、え、いや、ちょっと、あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

俺の咆哮が、乾いた診療所に響き渡った。。。

<5分後>
治療は終了した。
切除したところに、ガーゼを詰められ(ちなみにこれが結構痛い。要するにガーゼは体内に埋まっている)、この一連のやり取りと、俺のリアル咆哮によって、俺は看護婦のみんなに気に入られたらしく、なぜか看護婦の皆さんに手を振られながら処置室を退室。
長かった。恥ずかしかった。でも、俺よく耐えた。
自分をほめてあげている真っ盛りの俺に、先生は微笑みながら告げた。

「とりあえず応急処置はしましたが、手術しないとあな痔は治らないんですよね。」

言っている意味が、わからなかった…

6 Comments

  1. 初めまして。ツイッターで紹介されたどりつきました。医療従事者です。電車の中で笑いをこらえながら読ませていただきました。次が楽しみです。どうかお仕事に差し支えない程度に更新スピードアップしてください!!

  2. あの時にこんな事が起こっていたんだ。同じフロアにいたけど知らなかった。ごっつ忙しかったであろうに。しかし面白いわ。この調子で笑いのツボは押さえていってください。そして、パソコンの前でがっつり突っ込ませてもらいます。遠い異国より楽しみに読ませてもらいます!

  3. こちらは私も同期のあの方でしょうか? 褒めていただいてありがとうございます。エッセイにはネタが足りない気がするのですが。「山パン・肉工場物語」(バイトの思い出)、「僕とティム物語」(留学したら半年麻薬売人とルームシェアするはめになった思い出)、とかないです。2012年、がんばります。
    > 天才としか言いようが無いこの作品。エッセイ出すしかないね。

  4. ミユサン、
    コメントありがとうございます。コメントを管理しておらず返信遅れました。
    医療に携わっているからの見地あると思いますので、また気軽にコメント・メールください。まずは、ともあれ、毎週月曜、痔ブログを電車の中でよんで、いい一週間のスタートをお切りいただけたら幸いです。
    > 初めまして。ツイッターで紹介されたどりつきました。医療従事者です。電車の中で笑いをこらえながら読ませていただきました。次が楽しみです。どうかお仕事に差し支えない程度に更新スピードアップしてください!!

  5. Reisemamaさん、
    お久しぶりですね!あはは、そうなんです。忙しかったはずなのに、痔になってしまい、みんなには笑っていただいて、大変な年だったんですよ。今はドイツですか?野菜と水分をとり、血流をよくすることが痔を防ぎますので、お体にお気をつけてください!
    > あの時にこんな事が起こっていたんだ。同じフロアにいたけど知らなかった。ごっつ忙しかったであろうに。しかし面白いわ。この調子で笑いのツボは押さえていってください。そして、パソコンの前でがっつり突っ込ませてもらいます。遠い異国より楽しみに読ませてもらいます!

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