痔闘病記 シンガポール編

2-4: People’s Park Complex シンガの衝撃

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◎前回までのあらすじ
シンガポールで再発した、俺の痔。自分での処置に限界を感じた俺は、会社の先輩から病院の場所を教えてもらった。

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「People’s Park Complexか、、、」

5月に入りさらに暑さが増したシンガポール。
Stagnantな米欧日経済を尻目に、新たな世界経済の一極を目指す意思を首相が発したその勢いままに、シンガポールの人々の顔は自信と生気に満ちている。
そして、China Town。
その爆発的な勢いを肌で感じることができるChina Townは、シンガポールのマンハッタン。
People’s Park Complexは、そのChina Townの象徴と人々が口を揃えて呼ぶ。さながらシンガポールのエンパイアステートビル、といったところだろうか。

階下から全体を眺めると、その偉大な雄姿に言葉を失う。
peoples_complex

網膜をかつてなく刺激する、鮮烈な黄色い壁。
熱帯の太陽を反射し煌めく物干しざおは、コンクリートジャングルに散らばるダイヤモンドのようだ。

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俺は土曜の朝、一人、このPeople’s Park Complexに足を運んでいた。
この人でごった返すビルの3階に、痔の病院がある、と加納さんは教えてくれた。

不安でないと言ったら嘘になる。
勤務して2年とはいえ、シンガポールで本格的に病院に行くのは初めてだ。しかも、一度大変な体験をした痔。
しかし、不安はその原因を解消しない限り消えることはない。 原因を解消しないで不安だけなくしても、砂上の楼閣のポジティブ思考でしかない。

「Own your life. Own your pile」
人生は自分自身で導くもの。
俺は後ずさりしそうになる自分の足に喝をいれながら、一歩一歩進んでいく。

地上通路を通り、いよいよ俺はビルの3階に入った。

加納さんの書いてくれた地図を片手に握りしめながら歩くと、足つぼマッサージが並ぶ中、病院らしい看板がかかったお店が目に留まった。
china_clinic

「これか?」
俺は身を寄せる。
次の瞬間、俺は驚愕に戦慄した。
「? なんかたくさんの写真が。 記念撮影?」

数えきれないほどの痔のリアル写真と、痔の治療風景写真が、入り口に敷き詰められているのだ。

「帰っていいですか?」
俺は後ずさり寸前だ。
もはや、なかったことにしてもいいですか?

しかし、Own your life. Own your pile。
俺はすんでのところで踏みとどまり、病院の門をくぐったのである。
中に座っていたのは、インドネシア人の夫婦と思われる医者。柔和な笑顔をこちらにむけてCan I help you?と声をかけてくれた。
俺は、一週間ほど前から腫瘍があること、痛みがあるが出血はないこと、今までに同じ症状になったことがあること、そして今日は処置をしてほしくて来たことを、流暢な英語で伝えた。

インドネシア人の男性医者は、にっこりとうなずくと、奥の部屋に来るように手招きした。
その瞬間予想していなかったことが起きる。
往年の007さながら、壁にある小さな扉が開かれ、俺がその部屋に入ると、小さなおじいちゃんが座っていたのだ。

インドネシア人の男性は何かを男性に伝えると、そのまま笑顔で部屋を出ていく。
そう、インドネシア人は受付で、この俺の目の前に座っているおじいちゃんこそが先生だったのだ。
おじいちゃん先生は、先ほどの男性に負けず劣らず柔和な笑顔で俺にマシンガンのように話しかけてきた。

「ニーハオ。ハオミンフンシェン、ヒラハンシ、シェンハーオ。ニイマオハー、スイセンシャーニー。」

俺「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

みごとな中国語。
一言もわからない。
帰っていいですか?
もはや、なかったことにしてもいいですか?

いや、彼は俺のことを中国人と思っているだけかもしれない。シンガポールだし英語と中国語両方できるかも。
折れそうになる心を必死に支えながら、英語で、一週間ほど前から腫瘍があること、痛みがあるが出血はないこと、今までに同じ症状になったことがあること、そして今日は処置をしてほしくて来たこと、を伝えた。

「マオシャイシェンフー、ニーオーマー、エーゴー、ハナシャナーイー、サイシェン、ツーハー。」

本当に帰ろうかと思った。

俺の表情から、何を考えているのか伝わったらしい。
おじいちゃん先生は、ベッドに歩み寄ると、バンバンと強くたたき、ニヒルな笑顔を浮かべ俺に言い放った。

「Come on!」

それは英語で言えるんかい!!

こうして、俺は退路を断たれたのであった。

(次週に続く)
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●あとがき
今週もブログに訪問ありがとうございます。
今週は私、トルコ、モロッコ、スペインの旅行に来ています。Wifiがつながらず更新ができなくてすいません。
いつも月曜の朝を健康で健やかに送っていただくことがMissionのブログなので、来週以降は早めにサーバーにはアップして、月曜朝配信できるようにします。

ちなみに、痔ォンマスターが愛用ヘアケアの一つの私は、モロッコでモロカンオイルを探したんですが、見つかりませんでした。

さて、いつもならQ&Aに入るのですが、もはや23回も続けていると、皆さん聞きたいことはすべて聞いてしまったようで質問がないようです。
なので、今週は私が学んだことを発表します。

きっかけは、Twitterの友人から来たメッセージでした。
「●●(作者のこと)、痔のことPileって呼んでるけど、英語ではHemorrhoidわかる人多いよ。ちなみに私が住むフランスでもhémorroïdesで通じるよ。」
すっかり私はそのことを忘れていたのですが、マドリッドに着いてふと思い出し調べると、スペイン語でもhemorroides。

英語、フランス語、スペイン語、ほとんど同じですね。これは気になります。
善は急げ。迷ったらGO。
美術館に行く時間を後ろにずらして調べてみました。

結論: 同じ語源で、その由来は古代ギリシャ語の、haimorrhoides から来ているようです。
「Haima」は血という意味を持ち、rhoosは流れるものという意味を持ち、「出血しそうな静脈 (veins liable to discharge blood)」という意味だったようです。
痔核が処置しないといけないマジョリティーの症状と考えると、正しい言葉ですね。

ちなみに、Pileはラテン語のPila(球)が語源です。

私もここまで調べて大変すっきりしましたので、ブリューゲルと、ピカソを今から見てきます。

今週もいい一週間を。

☆先週は、People’s Park Complexと、Lucky Plazaを間違えました。(訂正済み) ノリが近いビルなので。
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2 Comments

  1. 作者がお世話になったPeople’s Park Complexにある病院が気になったので早速足を運んでみた。
    Genius(痔にass?)な作者と違い日系sales personは思い立ったらすぐに行動せねば。考えている暇はない。
    土曜日のチャイナタウンは人で溢れていた。People’s Park Complexはすぐに見つかったが、ふと我に返った。
    日本から飛行機に乗ってシンガポールに来て、この病院に直行するのはおかしいんじゃないか?本当はOrchardとかMarina bay sandsとか他にもっと行くべきところはあるんじゃないか?と思い、足が止まった。 そんな時、シンガポールの空を戦闘機(トムキャットを彷彿させるような)の爆音が背中を押した。
    恐る恐る3階に行ってみると意外にも目的の場所はあっさりと見つかった。休みだったため、まじまじと眺める。そこには世にも不思痔な世界が広がっていた。営業していなかったので写真は撮り放題だったが、数々の痔の写真はインパクトが強すぎて良識のない自分でもカメラに収めることは出来なかった。
    この入口をくぐった作者に敬意を表したい。
    そして、また来週からの投稿楽しみにしています。

  2. oureTさん、
    メッセージありがとうございます。
    > 作者がお世話になったPeople’s Park Complexにある病院が気になったので早速足を運んでみた。
    > 恐る恐る3階に行ってみると意外にも目的の場所はあっさりと見つかった。休みだったため、まじまじと眺める。そこには世にも不思痔な世界が広がっていた。営業していなかったので写真は撮り放題だったが、数々の痔の写真はインパクトが強すぎて良識のない自分でもカメラに収めることは出来なかった。
    もはや観光の名所ともなりつつあるPeople’s Park Complexに行かれたのですね。素晴らしいです。痔患者の鑑ですね。
    ブログの読者のほかの方も数名訪れたようですが、あの写真の数々、魂を揺さぶり、我々は痔の脅威のもとにただ平伏すのみですね。
    結論をいうと、処置などはちゃんとしている病院なので別に行っても問題ないと思います。シンガポールは痔の専門で、日本語が使える先生は去年の時点ではまだいないようですし。
    早く治したい、けどちゃんとしたところに行きたい、この痔レンマが肛門科は難しいですね。

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