痔闘病記 シンガポール編

2-1:マスカットとの再会

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維新の巨星、高杉晋作・久坂玄瑞などを輩出した吉田松陰の言葉に、「且つ 目前の安きを偸(ぬす)む」というものがある。「目先の安楽は一時しのぎと知れ」という意味だ。
日本から離れること6000キロ、シンガポールの地で、俺はこの言葉を噛み締めていた。

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2011年4月。
時が流れるのは早いものだ。

俺がシンガポールに来て二年、痔の闘病を乗り越えてから二年半が過ぎようとしていた。
2009年6月、日本でマーケッターとして躍動する俺を、シンガポールは見逃さなかった。突然あったシンガポール転勤へのオファーを俺は躊躇なくアクセプトした。ついに俺の舞台がグローバルになる日がきたのだ。

「汗水流して、体液流して、喰らいついてきた甲斐があったというものだ」
栄光と、苦節と、パンティーライナーにまみれた年月を俺は思い出しつつ、新たなチャレンジに胸は高まる一方であった。

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シンガポールでのマーケッター人生は、簡単なものではなかった。
●上司、部下、チームに国籍なんて関係ない。一つの会議で10以上の国籍が入り乱れることのほうが普通だ
●当然のことだが、全ての仕事は英語で行われる。日本語なんて、シンガポールの眠らないリトルトーキョーこと、カッページ(Cuppage)でしか使わない。
●「カーッパッ」「カーッパッ」と連発してきて無視をしていると、「Car Park」へと連れて行ってくれる強烈なシングリッシュのタクシードライバー。「カーッパッ」(Car Park)と、「カーッペッ」(Cuppage)の違いは要注意だ。
シンガポールで働いている人なら必ず直面する基本的なチャレンジ。しかし、人生はあきらめない限り乗り越えられる壁の連続だ。俺はグローバルマーケッターとしての第一歩を歩みだしていた。

その時、俺の臀部は完全に沈黙していた。
2008年に行ったシートン法は、俺の症状には的確な処置だったようだ。ゴム管が取れた後はまったく問題のない日々。当初、各方面から心配された、熱帯性気候による肛門まわりの湿度上昇→衛生状態の悪化も、ユニクロのメッシュタイプのパンツをはくことによって解消された。

当初はシンガポールの居酒屋「なごみ」で繰りひろげていた俺の痔トークも鳴りを潜め、人々の記憶からキングの記憶も消え去ろうとしていた。

まさに、アナル歴ロンダリングの完成まであと一歩まで来ていた。

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シンガポールは旧正月が終わる二月頃から乾季を迎え、日中は外に立っているだけでも汗がにじみ出る。
その日も暑い4月の土曜日だった。

Raffles Placeのthe SAILといわれるコンドミニアムに住んでいた俺は、好んで通っている足つぼマッサージ店「Young SPA」があるChina Townへの道を急いでいた。
日本と違い、シンガポールの歩道は舗装が十分されていないことが多く、30センチほどの段差を幾度も乗り越えなければならない。
chinatown

そんな道中の雰囲気がいつもと違う。
乾季もそのピークに向かいつつあり、気温がいつもより高いのか?
開発が進むシンガポール。工事の数が多くいつもよりも歩きづらいのか?
インドネシアの焼畑農業から流れてくるヘイズ(煙)のせいで息苦しいのか?

いや、違うのはシンガポールじゃねぇ。
俺だ。何かが、何かがおかしい。 俺はグローバル組織のプレッシャーに耐え抜いてきた、俺の内なる叫びに声を傾けてみた。

「おしりが、痛いよ。」

俺は耳を疑った。
そんなわけない。シートン法は完璧だったはずだ。
シンガポールに来てからロードレーサーを始めた俺。鋭角のサドルをものともしない臀部、毎晩レッドブルで鍛え上げられた俺の肉体。あな痔は手術でしか完治しないが、同時に手術をした場合の完治率は大変高いはずだ。

俺はChina Townの名店 蘭州拉麺の隣にある、トイレに飛び込む。
臀部の健康を守るフレームワーク、ANALGを覚えているだろうか?
俺はその最初のA(Analitical)の基本テクニックを繰り出すことにした。

スキンケアの要領で、右手の指の腹を、そっとあてがう。

次の瞬間、俺の中指は、その先にマスカット大のしこりを確認した。

「あぁ、キング師匠。あなただったのですね」

シンガポール 痛恨のあな痔再発のはじまりだった。

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今週のQ&A
ブログに訪問いただきありがとうございます。
シンガポール 痛恨の再発編を始めることにしました。5週間を予定していますのでよろしくお願いします。

先週は日本の立ち寄り、ブログに対する多くの定性調査を行ったのですが、一番多かったフィードバックが「シートン法のイラストがよくわからない」(その結果、あまりエンゲージされない)というものでした。多くの人の痔に対するレレバンシーを高めるというビジョンがイラストのせいで達成できていないのはどうかと思い、今週はイラストを再度描いてみます。

下記、ディスクレーマーです。
※私の記憶と、ネットの情報を使って書いているので医学的には完璧に正しくはありません。
※※あまりリアルに書きすぎる and/or イラストで「痔」「肛門」という字を使いすぎると、会社・電車で読者の皆さんが好奇の目にさらされるので、そこらへんは配慮しました。

まず図解1から見てみましょう。
illustration_1

向かって左は、肛門を正面から見た図です。全体像を捕らえてください。
向かって右は、シートン法を、直腸・肛門・痔管との関係性から見たものです。今までも何回か登場しているイラストですが、直腸の歯状線から細菌が入り、肛門とは違う場所に細いトンネル(痔管)ができてしまうのが痔ろう。その痔管にゴム管を通し、ゆっくりと切断して、体外に出す方法です。

このイラストだと2Dなので、3Dの関係性がわかりやすいように、二つイラストを準備しました。
illustration_2

図解2(上図左側)を見てください。
これは、お尻を背面からまくったイラストになります。
ゴム管の半分は痔管をとおり、もう半分は肛門・直腸を通っていることがわかるかと思います。これを体外に引っ張るのです。

図解3(上図右側)を見てください。
これは切断面のイラストで、どのように肛門が切れていくかが伝わるかと思います。
医療サイトなどを見ていると、「豆腐を糸で切るイメージ」「氷を糸で切るイメージ」などの説明があります。糸のような細いもので切りつつ、切断した後はまたくっつくイメージ、が肝要です。
私の「肛門にピアスをつけて、それを引っ張る」という説明よりもわかりやすいですね。

これでわからない場合は、本職の医者に聞いていただくか、Google先生に聞いていただくか、私のNokia携帯に保存してある写真を見ていただくしかないかもしれません。私もこの手術法を理解するまで、家庭の医学を何回も読み直しました。

みなさんにイラストが届いたことを祈りながら。。。

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One comment

  1. 初めまして、いつも楽しく拝見させて頂いております。私もシートン法が理解しきれず、Google先生に聞いてみました。下記の説明が私には一番分かりやすかったです。
    http://daichoukoumon.com/zirounosyuzyutusetonhou.html
    「異物を排除しようとして…」というくだりで、スッと理解できました。
    シンガポールを離れてしまうことは寂しいですが、新天地でもご活躍を祈念しております。

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